「病院広報アワード2026」には全国83病院から86件のエントリーがあった。7月8日に国際モダンホスピタルショウ内で開催された「ファイナル・表彰式」後に、ファイナリスト4人はそれぞれの思いを語った。(最終回)
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【VHP部門】最優秀賞
社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院(熊本市南区)
広報室 澤村彩花さん
済生会熊本病院では、一般広報誌の発行を廃止するなど2024年に広報戦略を大きく転換させた。
きっかけは、県内在住の2,000人を対象に行った病院のイメージ調査だった。同じ地域の競合7病院との比較で、済生会熊本病院への関心や認知度は全世代で低く、若年層や次世代の患者層で特に低いことが分かった。
「思っていた以上に厳しい現実」。澤村さんたちは、それを病院の現在地と位置付けた。
一般広報誌「Piazza」は13年の創刊。済生会熊本病院に対する県民の認知度を高めようと毎年数百万円程度の製作費をつぎ込んできた。ところが調査では、「Piazza」を手にするのは病院を既に知っている連携先や行政の担当者らが中心で、本来のターゲットにほとんどリーチしていないことが裏付けられた。
地域の人口減少が進み患者や医療人材を地域の病院が奪い合う厳しい状況が続く中、「無駄なコストは広報に1円も掛けられない」
「インスタグラムはこの記事が人気」「広報誌も読んでくれるはず」-。そんな「たぶん」に頼る戦略を疑い、病院ブランドの再構築(リブランディング)に費用や人材、時間を全振りすることにした。
澤村さんは大卒後、テレビ局や住宅メーカーのマーケティング部で勤務し23年1月、済生会熊本病院に入職。院内の組織改編で24年に広報室が設置されると主任に就任し、それまでの施策をゼロベースで見直す広報改革を進めてきた。主観を捨て、データを駆使して客観的・戦略的に広報を考えることを大切にしている。
済生会熊本病院の歴史や理念、現場の熱意を地域にどう伝えるか-。それを見極めるため、病院の幹部全員を最大で2時間インタビューした。全職員を対象にアンケートも行い、リブランディングの方向性を形にした。
済生会熊本病院の価値を言語化し、現場で共有するためのブランドステートメントを「いのちから、幸せをつくる。」に、それを地域住民の視点に置き換えた言葉(タグライン)は「しあわせ、さいせい。」に決めた。
さらに、命に向き合う病院の姿勢と志を地域に視覚的に伝えようと、「信頼・知性・誠実」を意味するシアン100%(青緑色)の「さいせいBLUE」をブランドカラーにした。
次の段階では、地元のテレビ局を巻き込んで病院リブランディングの社会実装を仕掛けた。その一環で、現場の熱意やスタッフのリアルな表情を伝えるため、病院の多職種が出演するイメージCMを作った。
暮らしに生かせる医療の知恵や最新の治療法を医師らが解説するミニ番組「しあわせ、医のチカラ」の放送も始まった。番組の視聴率を6%と換算した場合の想定総リーチ数は、年120万人を超えている。
インスタグラムの運用も見直した。情報発信の軸足を各部署の「スタッフの声」に切り替えると、閲覧数は前年の4.7倍に跳ね上がった。
「広報は筋トレ」と澤村さん。「ブランディングは単発のイベントではありません。SNSやウェブだけ、広報誌だけを頑張ってもいけない。日々の積み重ねであって、職員一人一人がブランドを体現して、ぶれずに発信し続けることが必要です」
だからこそ、データに基づく広報への転換が不可欠だと感じている。
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